2016年10月24日月曜日

我慢がまん

国体が終わってから、ほとんど登っておりません。
なぜって、自分の研究を頑張らねばならぬからです。
修士論文を書かないと卒業できませんからね。

が、まーったく外での遊びがないのも嫌だったので、昨日はいましさんと小川山に行ってきた。
小川山に来るのは一年ぶりくらいか。もう年に一度くらいの頻度になりつつある。
紅葉がキレイだったけど、駐車場が溢れんばかりだったのに驚きあきれる。ぐへー。
なんとかギリギリ車を停めて、ビクターへ。
賑わっているところにそーっと入って行って、ゆっくりアップ開始。
「コンケーブ」とか「ビクター」とか、久しぶりに登る課題はなんだか新鮮。
とにかく動きがぎこちないけれど、外で快適に登れていることに心身ともに喜んでいる感じ。
人がトライしているのを見て、登ったことのなかった「モファットトラバース」シリーズも登った。
気づいたら、ゆっくりではなくしっかりアップしていた。
リピートだろうとなんだろうと、楽しいものは楽しい。
仕組みはいたって単純なんです。

アップが終わって、マラ岩へ。本日のメインである「メランジ」に行く。
ここでSACの人々とばったり。あら、意外なところで会いますね。
岩小屋の中は当然日が一切当たらないので、かなり寒かった。
それなのに湿気も籠っている感じ。ここはコンディションが難しいんだな。
いましさんがヌンチャクを掛けてムーヴの練習をしてきたところで、ちょっと触らせてもらう。
当然のごとく、1手目からいきなり容赦ない悪さ。
多少リーチで得するかなと思ったけど、全くそんな感じはなかった。
出だしのムーヴを何度かやって、「不可能ではないよな」程度の感触を得たところで次へ。
テン山でなんとかかんとかムーヴをバラしていって、ぎりぎり抜けられた。
いや、ボルト間隔が近いから抜けられたようなものか。
中間部のランジと、後半のクリップが特にしんどかった。
ホールドの掛かりはどれもポジティブなのに、とにかく足が悪い。
いましさんはその後2回トライしていたけど、あまり調子は良くなさそうだった。

余談だけれど、こういう容赦ない内容のルートをやってみると、
「ロープを使う」「クリップする」ということがムーヴの一部になることを痛感する。
普段ぼんやり考えているより、クライミングの難しさは何層にもなっていて、複雑なんだよな。

トライが終わって、日没までまだ少しあることを確認して、いましさんが一言、
「・・・夜長行っていい?」
ということで、おそらく10年ぶりくらいに屋根岩ボルダーへ。
倉上さんの黒本完全制覇で最後まで残っていたという謎の課題、「夜長」。
初段ということになっているけれど、トライしているのは見たことないし、チョーク跡も皆無。
実際、背伸びして届くホールドからの一手で初段はある、とのことなので、まずそれから。
が、これがさっぱりできない。というか離陸すらできない。
すごいですよこれ。スラブとかでもないのに、浮けない初段なんて本当に久しぶり。
ガチャガチャした結晶の持ち方をあーでもないこーでもないと試して、
最後にはなんとか離陸して一手出すことは出来た。
止めるホールドまであと30センチくらいあったけど。
夜長

いましさんも、初段のリピートで親指の皮を抉られて撃沈。
史上最強の初段候補筆頭ですよ、これは。
ということで、夜長の恐ろしさを思い知って終了となりました。

これといった成果なしで、ツライといえばツライけど、
もとより外で登ること自体が目的の日曜日だったので、まあよしとする。

・・・なんだか、老人みたいなコメントだな。いかんいかん。

2016年10月14日金曜日

国体

もう一週間近くたってしまいましたが、岩手国体に行ってきました。

木曜日に長野を出て、新幹線で盛岡へ。
大宮で乗り換えてから小DKと話していたらあっという間に仙台。
「え、もうそんなとこまで来てるの!?」とか言っていたら、盛岡。
新幹線って速いんだなー、なんて捻りのない感想しか出てこなかった。

ホテルに着いてからはかなり時間があったので、盛岡城跡公園を散歩したりして過ごした。

翌日から競技。初日はボルダーの予選。
出番が44番とかなり遅く、半日近くアイソレーションにいた。
第1課題が薄被りのボテボテで今風。
第2課題が癖のありそうなスラブ。
第3課題がスローパーとピンチでガシガシ登る系で、
第4課題がボテとカチで明らかに二―バーを誘っている感じのどっかぶり。
出番が遅くひたすらアップ出来たので体は動いていた気がするけど、
どの課題もただただ出来なかった。
ボーナス2まで取れたものもあったけど、そこから先が押し切れなかった。
単純にフィジカルで負けている感じ。
小DKと二人で1完登で、結果は22位。

二日目はリードの予選。朝から雨。
競技出来るのかっていうくらい冷たい雨がざんざん降っていたけど、
ちょっと後ろに押したくらいで競技できていた模様。
運営側の人たちは本当に大変だっただろうな。
この日はボルダーと逆で出番が早く、4番。
オブザベした印象では、ホールドの掛かりは良くて、かわりに傾斜で殺されそう、という感じだった。
実際やってみると、一手一手が結構遠かった以外は思った通りだった。
で、また例によってただ単にできなかった。中間部ちょっと上で早々にパンプ落ち。
会場が外でおっそろしく寒いので、弁当を食べてから早々に宿に撤退した。
最終的な結果は17位。

最終日はゆっくり会場に行って、決勝を見つつお土産を買い込んだ。
初めて参加したアフターパーティーは本当に楽しかったけれど、
二次会で限界を迎えて、一足先に帰った。
小DKは豪華なメンツに交じって明け方までボーリングをしていたらしい。


数年ぶりの国体は、まあこんな感じでした。
競技は正直ダメダメ。不甲斐なさで一杯。
岩で登っているだけなら、苦手なものは後回しにしてしまうこともできるし、
ジャンルをがらっと変えることだってできてしまうけれど、
人工壁で登るとその苦手が明確な弱点として浮き出てくる。
今の自分には、そういう死角になっている部分が多すぎる。
コンペに出るか出ないかの話は抜きにして、死角を減らしていけるように精進します。

それはそうと、数年ぶりにコンペに出てみたら、同窓会みたいで面白かった。
ユースのコンペで一緒だった人たちが、変わっていたり、変わっていなかったり。
久しぶりにあった人も、初めてあった人も、とにかくいろんな人に会えてよかった。

2016年10月3日月曜日

晴れ間

さて、夢のような土曜日の後は、また天気が悪かった。
土曜日の夜にまた雨が降ってしまったらしく、その後も降ったりやんだり。
本当なら大ザルと弁天岩に行く予定だったのだけど、
あまりに望みがなさそうだったので、行き先を海谷に変更した。
予報では、北に行った方が天気が良さそうだった。

糸魚川方面に走っていくと、青空だった。なんだか久々。
海谷に着いたらまた曇ってきてしまったけど、天気は悪くなかった。
谷底にたどり着く頃には、また晴れ間がのぞいた。
岩は全体的に濡れていたものの、日の当たるところはどんどん乾いた。
毎度毎度、すごい藪

去年登った「アーモンドラッシュ」(1級)をやりたいそうなので、その辺でアップ。
「アーモンドラッシュ」はホールドが湿気ているので、スタンドでもかなり悪く感じた。
コンディションがいい時はそうでもないんだろうけど。
大ザルはとりあえずスタンドで登ってご満悦。
こちらは近くの小さい岩に3級くらいのラインを新しく1本引いて、アップ終了。
そうこうしているうちに、前回登れなかったPが乾いてきたので、そちらに戻った。

もう一度上からロープで降りて軽く掃除して、トライ。
前回縁が欠けたポケットは使えなくなった、というかもう使いたくないので、
怖いのを我慢して大きなムーヴで勝負することに。
スタンスをあれこれ変えつつ何度かデッドをかまして、
狙いを外して横に吹っ飛ばされたりしたけど、止まりそうになってきた。
気合を入れて臨んだトライで、核心の一手がやっとこさ止まり、
続く初めてのパートは下地がもろに段差で怖かったものの、なんとか押し切った。
久々にボルダーでいいラインを初登できて、満足。
名前は「蝸牛の角」、グレードは初段かな。高さと下地は加味していませんので、悪しからず。

そのあとは「ポリゴン」の岩の隣にあるトンネルっぽい岩で登って終了。
低めだけど、結構面白かった。特に左側のラインが、ガバガバで下地が悪くてスリリング。

そろそろ紅葉が始まるかな。

アプローチの崩壊した橋

クリーニング中

Heros

今年の秋はちょっと異常。秋晴れはどこへ行ったのか。
予報を見るたびにため息しか出てこないこの頃だったけれど、
天気に翻弄されながらもこの週末はとてもいい週末だった。

去年の秋は、ソニー・トロッターに会った。
今年の秋は、また別のヒーローに会ってきました。

金曜日に小DKと荻パンに遠征して、翌日は単身瑞牆へ。
管理棟を覗いてみると、受付のところに異国の方が。
キャロライン・シェバルディーニ。見間違えようもない。
近くにカメラマンのエディとTNFのデイヴも居て、挨拶をした。
会うなり「ゲンキ!?」とでっかい声で訪ねてくるエディ。
なるほど、これがサル左衛門のいう「エディちゃん語」か。
コーヒーを奢ってくれるというので、ごちそうになった。注文は僕がしたけど。
そんなことをしていたら、キャロラインがジェームスを呼んできてくれた。
ジェームス・ピアスン。トラッドクライミングに興味を持った頃からの、僕にとってのヒーローだ。

「いい天気だな」
「典型的な日本の天気だね、これは」
とか言って笑うしかない天気だったので、とりあえずゆっくりお茶して、
この日は不動沢のルートを案内して回ることになった。
それでも一応道具を用意するジェームス

行く前に写真を見せたらジェームスが食いついたので、弁天岩のPを見に行った。
トポにはアプローチ2時間と書いてあるので、どう思うかなと少し心配したけれど、
彼らはバリバリ歩くクライマーだったので、いつもより早く着いたくらいだった。
聞くと、数日前まで滞在していた金華山はアプローチ3時間なのだそう。そりゃ楽に感じるわ。
Pを眺めるジェームス

ジェームスはフィックスを登っていったきりなかなか降りてこない。
彼がぶら下がっている間、僕は取り付きでキャロラインと話していた。
クライミングスタイルとか、日本のクライマーのメンタリティーのこととか、突っ込んだ話もした。
こういうことを表現するのは、本当に難しい。
それでも彼女は興味深そうに聞いてくれるので、助かった。

その後は千両岩のフェースに行ったり、近くの「ハードノックライフ」を眺めたり、
エンペラータワーの5.13たちを紹介したりしたけれど、どこもシケシケ。
フェースが辛うじて乾きそうではあった。
さしあたって二人は千両岩のルートをやっているそうで、
ジェームスによると「パッセンジャー」はE8かE9になるらしい。
キャロラインにとってはアメリカ式のRとかXの表記は馴染みがないようで、
「これってつまりどういう意味?」と聞かれた。
「Rは『おっかないけど大丈夫』、R/Xは『落ちない方がいい』、Xは『落ちたらアウト』」とジェームス。
うん、分かりやすい。

管理棟に帰ってきてから、梨を食べながらエディに金華山の写真を見せてもらった。
日本にもこんな場所があるのか。ぜひ一度行ってみたい。
自分がカメラを向けられると大抵サムズアップするエディ


彼らの登りが見られなかったのは本当に残念だったけれど、
一緒に瑞牆の森を歩いて、岩を見て回って、クライミングの話ができた、
それだけでとても楽しく、僕にとっては非常に贅沢な時間だった。
自分が日本の、瑞牆山の片隅でゆっくりゆっくりやっていることが、
世界のどこかに、あるいは誰かに繋がっているんだと、そう感じた。
そしてそれが彼らだったことが、とても光栄だった。

ジェームスはPを見て、「出来るかどうかわからないけど、Super coolだ」とコメントをくれた。
それだけでも、やってみる価値がある。