2016年5月23日月曜日

やってみれば

この週末も、不動沢に行ってきました。今回はいまし監督が一緒。
監督と新兵器

朝、忘れ物するやらなにやらで出発が遅れる。申し訳ない。
通常よりちょっと遅めで駐車場に着いたら、混みあっていた。
そろそろそういう季節だよね。
撮影合宿のメンバーのみなさんに久しぶりに会った。
瑞牆に集う人たちに会うと、今年もまた夏が来るなあという気分になる。

弁天まで上がると、前回よりも暖かかった。
まあ、大ザルPの取り付きと「グリーンベレー」のあたりでは寒さが全然違うんだけど。
たった20メートルくらいで、なんでしょうかこの違いは。

大ザルが今回はリードするそうで、いつものようにトップロープで練習して、大休止。
が、寝そべって休んでいたら両足が攣って動けなくなっていた。
見た目は非常に情けないのだけど、本人は「冗談じゃない」という様子だった。
なんとかその騒ぎが治まって、不安を抱きながらもリードの準備。
岩のコンディションは前回よりも遥かにいいようで、
中間部のジャムの効きが微妙なセクションはぷるぷるしながらも越えていった。
クラックが閉じる直前の核心もこなして、右のフレークに出ていく前でテンション。
今回はここまで、と辞めたのだそう。
シーズン初めとしては上々の感触だったようだ。
さて、夏本番になってから、勝負できるか?
改めて今後の展開に期待。

仕事中のいまし監督

残りの時間は矢立のPへ。
今回は核心と思われる中間部以降のムーヴをやってみた。
いざやってみると、どこも案外易しくて、パートごとはそれぞれ1回でバラせた。
4級から3級にかかる程度のシークエンスを3つくらい続けるようなイメージ。
ただ、その間ほとんどレストがないのと、プロテクションがあまり効きそうにないのが気になる。
派手に落ちればカムが2つくらい吹っ飛びそう。
とはいえ恐ろしく、どうしようもなくランナウトするわけでもないし、
もっとあれこれ検証すればよりよい切り抜け方が見つかりそうだし、印象はポジティブだった。
結局1時間ちょっとぶら下がって、出だしのクラック以外は全部ムーヴをやって、終わった。

思ったよりも易しそうだったけど、トラッドはここからが面白いんです。
ムーヴの難易度に上乗せされる不確定要素をここからどう削っていくか、そのプロセスがいい。
やってみればあっけなく登れてしまうのかもしれないし、
今見えていない厳しさが露見してくるのかもしれない。
やってみたことを後悔する結果だって、あり得る。
思ったよりもムーヴが易しいからと言って、それが即ち「このルートは簡単」となるわけではない。
だから、いいんです。

次に行くのはしばらく先かも。
オラ、わくわくすっぞ!

2016年5月18日水曜日

体力が落ちた気がする

はい、タイトルの通り。
この週末は久しぶりに二日とも外に出かけて、
終わった後そんな気がしたのであります。

土曜日は大ザルと弁天・矢立へ。
大ザルは今シーズン、勝負するところまで早めに持ち込みたいようで、
今回はトップロープで3回リハーサルしていた。
クラックの中が湿気っぽく、コンディションは微妙だった様子。
それに、シーズン初めでムーヴやホールドを思い出すのに時間がかかったようだった。
最初に「えー、これかよ」と思ったものでも、繰り返しやっていると慣れてくるわけで、
それは大抵のことに言えるけれど、リハーサルを必要とするルートではそれがよくわかる。
大ザルの動きが徐々に良くなっていくのを見ながら、今シーズンへの期待が膨らんだ。
頑張ってください。

弁天から矢立に移動して、前回ロープを張ったラインを掃除。
イワタケがあまり生えていないので、掃除は比較的楽だった。
ついでに適当に持って行ったプロテクションを入れてみたら、ちらほら取れることが確認できた。
「胎動」ほどのランナウトはないものの、全体的にサイズが小さいのが気になる。
ひたすらスモールカム一個を足元にしてボルダームーヴ、という印象。
下部のクラックは中に粉っぽい地衣類が張り付いていて、そこだけは気合を入れて磨いた。
1時間くらいかけて一通り掃除は済んだので、次回からはトライできるかな。


昨日は、来日中のポール・ロビンソンを呼んで瑞牆でボルダー。
現地集合ということでいましさんたちと駐車場に行ったら、
エッジの常連さんがほとんど全員いるんじゃないかというくらい、大勢いた。
しばらく待っていたら、アサナの社長ジェイミーと一緒にポールが到着。
長い移動でお疲れ気味なのか、思っていたより静かな人だった。あと、細い。

大所帯なので広いところの方がいいかということで、会場エリアへ。
ガリガリ岩でアップして、「ガリガリ君」(1級)をやったら少しハマった。ポールは一撃。
常連さんたちのセッションが終わってから、「瑞牆レイバック」周辺へ移動。
「夜」(二段)を紹介して、一緒にトライし始めたところまではよかったけれど、
5月とは思えない蒸し暑さでホールドが全く持てず。
セミも鳴いてたし。
ポールはコンディションの悪さに一気にテンションダウン。
そのうちジェイミーと二人で散歩に出かけて行った。
「これはミスったなー」と思いながら「瑞牆レイバック」のセッションを見ていたら、
二人が帰ってきて「この岩が気になる」と撮ってきた写真を見せられた。
なんだかちょっと元気になったようだったし、ポールが気になった「倶利伽羅」の岩へ。
ポールが「竜王」(1級?)と「倶利伽羅」(初段)を両方サクサク落として、
こちらも「倶利伽羅」をリピートしたので、山形県エリアに移動することに。
ポール on 竜王

「阿修羅」周辺の課題を一通り紹介したら、ポールは「ガルーダ」(二段)からトライし始めた。
スタートのポジションのユニークさに惹かれたらしい。
このコンディションでそれなのね、と思ったけど、負けじと参戦。
案の定、ひたすら離陸しては落ち、離陸しては落ち。
これは「夜」と同じパターンか?と思ったら、ポールが1手目を止めてそのまま一抜け。
僕も以前登った時のムーヴを思い出して、膝を擦りむきながらリピート。
続いて「インドラ」をやったら、これもなんとかリピートできた。ひたすら指が痛かった。
ポールは指の痛さにあっさり見切りをつけて、あとはのんびりしていた。
ジェイミーが「アシュラってどういう意味?」と聞いてきたので、
他の課題名も含めて話したら、予想通り「なるほど、クールだネ!」
さすがに「瑞牆ピョンピョン」のことは紹介できなかった。

最後に皇帝岩へ下って、ポールが「Vock」(初段)を登り、
エッジチームが「玉」でセッションするのを観戦して、撤収。
ポールの別次元っぷりを見られなかったのは残念だったけど、リフレッシュしてくれたようだし、
ジェイミーも非常に楽しそうだった。
というかジェイミーがいちばん楽しんでいた気がする。




おまけ
大盛りを頼んだら、二つ出てきたの巻

2016年5月9日月曜日

作業開始

今年のゴールデンウィークは正直あまりゴールデンではありませんでしたが、
それでもちまちまと不動沢に行っていました。

5日はりんたろうを連れて、何かマルチを登ろうということで「隠し金さがし」へ。
登るのは2回目、でももっと昔にトライしたことがあったから、3,4回めくらいな気がする。
前日が雨だったので、どうせ出だしは濡れてるんだろうなと思って行ったら、
これがびっくり、若干湿気っぽい程度で乾いていた。
さーて、こっちはリピートだしサクサク行くか、と取り付いたら、
もうそれこそオンサイトに近い緊張感でした。
やっぱり難しいのだな、このピッチは。
体感では「ベルジュエール」よりも、「ワイルドアットホーム」よりも難しい。そんな気がする。
前半はクラックで後半はスラブだけど、どちらもその要素だけでは登れないのがいい。
2ピッチ目の凹角でもまたちょっと戸惑ったし、
3ピッチ目は快適だけどボルトがものすごく遠いしで、
本当、グレード以上のものが必要だよ、このルートは。
りんたろうにはなかなか厳しい導入だったかもしれないけれど、
さて本人はどう感じたんだろうか・・・。


7日に、また大ザルと不動沢へ。今度は弁天・矢立まで行った。
弁天岩の取り付きの日陰には、かすかに氷があった。
今回はプロジェクトに新しいフィックスを張る作業。

大ザルが自分のプロジェクトのロープを替えに行って、2シーズン張ってあったロープを回収。
もうさすがにボロボロかなと思って見たら、ところによってはまだ使えそうだった。
過信してはいけないけど、技術というのは進歩しているんだな、なんて思った。
それから矢立岩に移動して、新しいプロジェクトにロープを張りに行った。
びしょ濡れの「アップ・アンド・ダウン」を登って、反対側の壁に降りる。
前に見た時とまたちょっと印象が違ったけれど、良さそうなラインだった。
プロテクションも取れそうなことが確認できたので、これはもうオールナチュラルでやるしかない。
というか、もうよっぽどのことがない限りこの地でボルトを打つことはないだろう。
そもそもボルトを打たずに登れるラインを探しているのだし。

どのくらいの頻度で来られるかは分からないけれど、今シーズンはこのラインに費やそう。

2016年5月1日日曜日

忘れられたルート

北海道では雪が降っているらしいですが、GWです。

昨日は大ザルと不動沢に行った。今シーズン初。
天気はいいけれど、風が冷たかった。ところどころツララが垂れている場所もあった。
開拓の作業を始めるのはもうちょっと先にして、
今回はいつだったかやったみたいに不動沢クラシックを継続するのが目的。

不動滝を少し過ぎて、夫婦岩のあたりから対岸をよーく見ると、
ぱっかり割れた小さい岩峰があるのが分かる。
と言っても、これを知っている人は非常に少ないみたいだけど。
これが今回の1本目、「虫歯クラック」(2P、5.8)。
見えているのは2P目

登山道から川に下って石楠花の藪を登り返し、岩の基部へ。
基部を右に回ってルンゼをちょっと詰めたところの左手にある短いクラックが1P目。
初登は別のところから入ったらしいけど、こっちの方がいいとのこと。
5.7くらいのチムニー~ハンドクラックを登って、バンドをトラバースして2P目のテラスへ。
ルートの本題である2P目を見上げてみると、まあ短い。すごく短く見える。
前半がワイドで、後半がスクイズなのだけど、思っていたよりもずっと小さかった。
まあいいか、とにかく登ろう。
と、クラックに入ってみると、これが絶妙に登りにくかった。
奥にジャミングは一切効かないし、微妙に細いサイズなので足が上げにくいし。
ちなみにプロテクションは大ザル作のチューブチョック2個でした。
ちょっと苦しいワイドを抜けて、あとはスクイズだけだ、と思ったら、これも登りにくかった。
狭すぎて胸も尻もつっかえる、顔の向きは変えられない。
なかなか気持ちよく進めないので、スケールの割に充実感があった。
大ザルもヘロヘロになりながらフォローしてきた。なんだか幸せそうだけど。
下降は頂上の木から懸垂一回で取り付きにそのまま戻れた。

滝に戻って、それから2本目、「ヘルスラブ」(5.11b、2P)へ。
これはずっと前から気になっていたものの結局トライしたことのなかったルート。
なんだか、すごく怖いんだとか。
出だしの日陰になっている部分が苔むしていて、半ば自然に還っている。
ヘルスラブ取り付き

いざトライしてみたら、出だしにいきなり小核心があった。
カムを入れるフレークもまだ上、ボルトはそのはるか上、そして下地は斜め。
汚れてしまったことがいやらしさを増しているのだけど、普通にやってもちょっと悪い立ちこみ。
行きつ戻りつして、思い切ってスメアで乗り越えた。緊張したー。
少し登ったところにエイリアンを入れて、苔に覆われかけた小ポケットを掘り出しながら登った。
2本目のボルトを過ぎたあたりが一番の核心だったようだけど、
この辺まで来ればもう日向で、岩は比較的キレイだったので問題なくこなせた。
4本目から左にトラバースして、あとはずっと登りやすいスラブ。
最後のビレイ点直下のランナウトもいい味を出している、気がする。

2P目は出だしの3歩くらいがやたら難しくて、正直1P目の核心より悪く感じた。
そのあとはずっと簡単だったけれど、今度はランナウト。
ボルトはなくなり、軽い音のするフレークに入れたエイリアンだけが頼り。
なんだかアルパインをやっているような気分になった。
最後は不動岩中段のブッシュに突っ込んで終了。
すぐ隣のルートがすごく近いところに走っているのが残念だけど、これはいいルート。

それから「牛乳びんクラック」(5.10a)につなげて、上のバンドから懸垂で降りた。
改めて、瑞牆の花崗岩のクラックは登りにくいなと思う。
ジョシュアツリーのクラックはサイズによらずカッターで切ったみたいに綺麗に割れているので、
ジャミングはしやすいし、カムの効きもいい。
それがここに来ると、ちゃんと場所を選ばないと一気に微妙になる。
ここで慣れておけば、むしろアメリカのクラックが物足りなくなったりして。ってそんなことないか。

僕はまだ元気だったので、帰りがけに「未来の舞」(5.11d)をリピート。
最後のいきなりガツンとくる核心にはまたビビったけど、落ちずに抜けられた。
いいよTCPro。実にいい。
グレードや見た目の美しさは「未来の舞」だけど、内容の面白さは「ヘルスラブ」の方が上かな。
どっちも、もっと登られていいルートだと思う。


瑞牆本が出版されてそれなりに経ったけれど、今回登ったルートはどちらも、
それまでと変わらず忘れられたまま埃をかぶった状態だったように思う。
「虫歯クラック」なんて、見に行った人すらいないんじゃないかと思うくらい。
でも、どちらも開拓者の姿勢がちらりと垣間見えるルートだった(一人はすぐ隣にいたけど)。
特に考えさせられたのは、「ヘルスラブ」のこと。
このルートはもともとエイド混じりで登られたのをフリー化したラインだったそうな。
登ってみるまでよく分かっていなかったけど、このエイド混じりというのが実は重要で、
登れる部分はちゃんと初めからフリーで登っているらしかった。
核心ではないにしても、決して簡単ではないこのスラブを、だ。
それはまだしも、さらに驚いたのは、ラインが蛇行していること。
エイドが混じっているとはいえ、きちんと「登るべきライン」を追って行った結果なんじゃないか。
本当に詳細なところまでは知らないけれど、
もしこれがエイドでの初登ラインとほとんど変わらないのだとしたら、凄いことだと思う。
エイドからのフリー化という背景と、そうして出来上がったこのラインが、
開拓者のボルトに対する考え方を示しているように思えて、僕はため息が出た。

半端なルート開拓はできないな、特にこの地では。
クラシックをトレースしてみると、いろいろなことが見えてきます。