2013年8月23日金曜日

これ如何に

暑い日が続いたと思ったら豪雨になったり。
これ如何に。

18日~20日に会の仲間と唐沢岳幕岩に行ってきました。
前から行ってみたかった岩場だったので期待して行ったのですが・・・


18日朝に松本を出発し、快晴に意気揚々と入山。
七倉から暗いトンネルをいくつもくぐり、高瀬ダムまでは1時間弱。
そこから幕岩がすぐそこに見えます。
が、いざ唐沢に入ったすぐに意気揚々とした雰囲気はどこへやら。
踏み跡はほとんど消え、ひたすら沢登り。

1時間ほど行ったところにあった金時の滝は綺麗だったけれど、
その横を抜けるルンゼは酷く脆く、注意していても足元が崩れていくような地獄。

苔とも泥ともつかぬものでコーティングされたフィックスを必死で掴んで登りました。
金時の滝を越えればその先は幕岩の下まで快適な沢歩き。
しかしワシの滝を越えてすぐのところにある岩小屋への入り口を見逃し、
一度正面壁の直下まで上がってしまいました。あらら。
ついでにルートを観察し、取り付きの目星を付けた所で引き返して岩小屋へ。
通称「大町の宿」。平らで、おいしい水がすぐ脇に出ている。素晴らしい!


アプローチに思ったよりも時間を食ってしまったので、
この日は予定していたルートの取り付きを偵察して回る事にした。
先ず右稜のコルまで上がり、すぐ近くに「大凹角ルート」の取り付きも発見。
大洞穴ハングも道なき道を見に行って、急な草付きにひやひやしながらも偵察完了。
岩小屋に戻って、肉団子を山の様に入れた辛口カレーをこしらえた。

もはやメインが肉団子なのかルーなのかわかりません。


19日は2パーティで「大チムニールート」(A2 Ⅳ+)を登る事に。
WADE・ワンさん、小平さん・タクローのチームで登攀開始。
序盤はプロテクションの乏しい草付きを2ピッチ登り、
3ピッチ目が最初の核心となるエイドのピッチ(A2)。
被った脆い壁をワンさんがアブミで果敢に越える。
「エイドマスター目指してますから」と言う割に、かなり怖そうだった。
それもそのはず、ボルトは古いし岩も脆い。

会の中でも体重が重めのコンビだったので、後ろの小平パーティには
「僕らが乗って大丈夫だったんで問題ないです」と自虐のような励ましをあげた。
そこからの数ピッチはブッシュがあるものの岩の要素が多く、
わりと快適なクライミングが楽しめた。
プロテクションは相変わらず乏しくランナウトで進んでいく。
落ちなければ問題ないのだ!

上部岩壁が見えた所でラインを左に向け、中央カンテを登る。
ここで「畠山ルート」から一旦分かれ、「大チムニールート」の部分に入る。
顕著なコーナークラックを登った後、左にトラバースして大チムニーへ。
体がすっぽり入り、典型的なバックアンドフットで登る爽快な2ピッチ。
プロテクションも適度に取れて、なかなかいいピッチだった。


チムニーを抜けると、あとはひたすらブッシュの中を登る羽目になった。
ラインは恐らく外していないので、大体こんなものなのだろう。
それにしても、既成ルートなのにひたすら藪漕ぎとは、これ如何に。
昔は小さかった木が大きくなってしまったのだろうか。
ルートの終了点も御覧の通り。

藪が深すぎて人が見えません。
ある意味これが日本のクライミングの典型なのかもしれません。

既に時間は暗くなる寸前。
急いで下降点となる右稜の頭を探したものの、踏み跡はほとんどなく、
視界も効かないので1時間ほど探したところで断念。
樹林帯の平らな所を見つけて、ツェルトを広げてビバークした。
木立が濃すぎて星は見られず。残念。


明るくなるとともに起きだして、腹ペコなのを我慢しながら右稜の頭探索を再開。
西壁ルンゼ周辺を中心にあちこち探したものの見つからず。
「最悪、このままトラバースしてC沢を下るか」と言っていたところで、
「いや、絶対にある筈!」ともう一度西壁ルンゼへ。
ルンゼの落ち口近くの視界が開けたところまで下り、地形をよく見るとルンゼの対岸が長く張り出している。
「これだ!」ということでルンゼを慎重に渡り、背の低い藪を下っていくと、ありました。

下降点の直前になってやっとはっきりした踏み跡が表れ、ピンクのテープも付いていた。
ルート図には『踏み跡を辿って容易に達せられる』と書いてあったけれどとんでもなかった。

とりあえずこれで降りられる。
4本あるザイルをフルに使って落石の多い右稜のルート沿いを懸垂下降し、
無事に大町の宿へ帰り着いた。
持ってきたサイダー4リットルを一気に空け、
パスタもガンガン茹でて一瞬で平らげ、しばし休憩。
すると岩小屋すぐ横の沢を人の頭くらいの落石が凄い音を立てながらいくつも転がって行った。
C沢を下ることにならなくて本当によかった。

あとはダムへと下るだけ。
途中で雨が降り出し、金時の滝を高巻く道の入り口が見つからなかったため、
帰りも地獄のボロボロルンゼを通りことに。
50メートルの懸垂下降2回で降りきった。
そのころには雨がぱったり止み、ダムに着くころには一瞬日差しが。
振り返ると、幕岩が照らされて綺麗に見えた。
誘っているようにも、挑発しているようにも、拒絶しているようにも見えた。



今回の山行は自分たちの未熟さを強く感じる結果となった。
当初の予定ではルートを複数本登っておなか一杯、となるはずだったのだが、
正直なところ1本でおなか一杯、というか半分グロッキーになってしまった。
登攀の遅さ、ルーファイの甘さ、体力、精神力など、反省・課題は山積みだ。
自分たちのクライミングに対する自負があった。
それに対して「驕るなよ、若造が!」と幕岩に喝を入れられたような気分。
真摯に受け止めて、次にステップに繋げていきたい。

次に行くのはいつになるかな。
でも「幕岩の中心で愛を叫ぶ」もあることだし、プライベートでいつか行ってみたいな。

2013年8月13日火曜日

MAMMUT

話は前後しますが、
この度MAMMUT JAPAN様にサポートをしていただくことになりました。
主にロープ、クライミングギア等の面で支えていただいています。

とはいえまだ日が浅いので、いただいたギアを使い始めた段階なのですが、
先日の瑞牆で使ったロープ2本(Galaxy 10.0とTusk 9.8)は好感触でした。
降ろしたてでもしなやかで扱いやすく、ロープの使い始めによくある猛烈なキンクもなし。
他のモデルを使うのが今から楽しみです。

それと、早く使ってみたいのがSoho Crash Pad。
三つ折りのボルダリングマットです。
パッキング出来る量が多いので、僕のような開拓クライマーにはいいかなと期待しています。
これなら山でのボルダリングにも使えるかな・・・?
早くシーズンにならないかな。


楽しみは尽きません。

2013年8月10日土曜日

『二十億光年の孤独』

今日、弁天岩のプロジェクトが完成しました。
このラインを見出して、掃除して、トライして、3年目の夏でした。


昨日から泊まりで瑞牆へ。

昨日はサル左衛門は独りボルダーの開拓へ行ってしまったので、
大ザルと二人で弁天へ。
ササっとトップロープを張って、今回も2回トライした。
リードすることを前提にして、プロテクションのセットも含めてムーヴを修正。
核心手前にレストポイントはあるものの、やっぱり疲れるなという印象。
更に、2トライ目でルーフ部分のスタンスが欠けた。
かなり安定していただけにちょっとげんなりした。
大ザルは既成のクラック部分を練習していた。
クラックの縁が尖っていて猛烈に痛いらしい。
既成のルートは10cということらしいが、どう見ても湯川のバンパイアより悪そう。
このルートも厳しそうだなぁ。
トップロープでずりずりしてみるサル左衛門(写真は今日の)


今日は昨日よりも天気がよく、暑そうだった。事実暑かった。
スタンスが欠けた部分だけでもやっておきたかったので、
アップも兼ねてもう一度トップロープでトライ。
ルーフ部分は直ぐに修正して、それからカムのセットも確認して、
全部のカムを回収してロープを抜いた。
大ザルのビレイをしながらレストして、ぼんやりして、トイレに行って、
ロープのやりくりの手筈を確認して、さて本番。
サル左衛門が上でカメラを構えてスタンバイしてくれた。

下部に張り出し3メートルはあるルーフトラバースがあるので、
ロープドラッグを防ぐために出だしはダブルロープで登る。
「グリーンベレー」の出だしの立木をかわすために、
一度セルフを取ってロープを引き抜き、引っ掛からない方にたらす。
それから「グリーンベレー」を天井レイバックの手前まで登り、右のルーフに入る。
いきなりランナウトで怖くて声が出たが、ここは安定して抜ける。
右のフェースに出てカムを固め取りしたところで、ルーフの方に掛けてきたロープを外してポイ。
あとはシングルロープで登る。
面倒だけれど、こうしないと登れないので。


ホールドは大きいけれど動きも大きいフェースをランナウトでぐいぐい登って、
核心手前のレストポイントに入る。

全回復は出来ないけれど、かなり長くレストしていた。
それから、核心に突っ込む。


プロテクションはアゴまで入っていないハーケンだし、
落ちたら横に吹っ飛んでどうなるか分からないし、かなり怖かった。
昨日細かいところまで詰めておいてよかった。

あとはずっと易しいけれど気が抜けないスラブフェースを登って、
最後のフレークを掴むことが出来た。

このルートの開拓は大変だった。
壁が前傾している上にラインが蛇行しているので、掃除がまず大変。
開拓に着手した年は天気が悪く、行ってもろくに作業出来ない日もあった。
サル左衛門が終了点を打っていたら土砂降りになり、酷い目にあったらしい。
トップロープでのリハーサルも落ちたら戻れない箇所がいくつもあって面倒だった。

遠くて、ボールドで、トライするも一苦労。
安近短の真逆をいくこのルートだが、
それらを除いても、通い続けるだけの魅力がこのラインにはあった。
少なくとも、僕はそう感じていた。

かなり取っつきにくく、人気ルートになることはありえないだろう。
再登が出ないまま、また自然に還って埋もれてしまうかもしれない。
それでもいい。
自分がこのルートに惚れ込んで、片想いのように思い描いて、
そしてそれまでの時間からすれば呆気ないくらい一気に登れて、
達成感と形容し難いもの寂しさを感じている。
それがあればいい。
今までの自分はそれでよくて、これからの自分もそうあればいいと思う。

二十億光年の孤独 5.13b R
とします。

開拓の全てに関わってくれた大ザルとサル左衛門、ありがとうございました。